従来のブラケットによる表側の矯正だと「どうしても矯正装置が見えてしまう」「人前で笑うのに抵抗がある」といった心理的な壁を感じる大人の方は少なくありません。
そこで、なるべく目立たずに仕事やプライベートにも支障がない方法で歯列矯正をしたい、という方におすすめなのが「目立たない歯列矯正」です。
今回は、周囲の人からも気づかれにくい歯列矯正の種類とメリット・デメリットについてご紹介いたします。
目立たない歯列矯正①裏側矯正
目立たない歯列矯正の一つ目として、ブラケットによる「裏側矯正」が挙げられます。
「裏側矯正」とは、歯の裏側に矯正装置を装着して歯を動かしていく治療法です。
舌側に付けるため、別名「舌側矯正」とも呼ばれます。
ブラケット裏側矯正は表側より治療費がやや高いのはなぜ?
歯は表側と裏側では形状が異なるため、ブラケットやワイヤーの付け方も異なってきます。表側に付ける時、医師は直接見て確認しながら付けられる一方、裏側ではさすがに表側と同じようにはできません。
そのため、裏側矯正を付ける場合は患者さんに装着する前に、まずは歯科技工士が型取りした歯型にブラケットを付け、ワイヤーを通した状態の模型を製作し、理想的な装着位置を決定していくという工程を行います。
患者さんに付ける時はこの模型を元に付けていくため、とても重要な工程となります。裏側矯正が表側矯正よりも治療費がやや高くなるのはこうした理由になります。
ブラケット裏側矯正の3つのメリット
①目立たない
ブラケット裏側矯正の一番のメリットは、なんといっても目立たないという点です。
矯正歯科医の腕にもよりますが、だいたいどのような歯並びでも裏側で歯列矯正ができるので、これまで見た目の問題で断念してきた方でも安心して治療に踏み切ることができます。
②虫歯になりにくい
一見、裏側矯正の方が歯磨きしにくいイメージがあり、(こちらの方が虫歯になりやすいのでは?)と思われる方も多いと思います。しかし実際は、歯の表側よりも裏側の方が唾液(※唾液には殺菌作用や再石灰化作用あり)も常に循環しているので、しっかりと日々の歯磨きをすれば虫歯になりにくい環境となっています。
③心理的負担が少ない
ブラケット表側矯正中、装置が見えてしまうことにどうしても抵抗がある方にとって、我慢しながら何年も治療を続けるのは心理的に負担が大きくなります。特に職業柄、人前に出る必要のある方(受付、営業職、店員、モデル、女優など)にとっては、裏側矯正の方が心理的負担も軽減されるので、治療もスムーズに進めることができます。
裏側矯正の3つのデメリット
①表側矯正よりもやや治療費が高めに
上述した通り、裏側矯正の方が模型づくりで工程が増える分、治療費がやや高めになります。
②裏側矯正できる症例が限られる
すべての方が裏側矯正ができるとは限りません。裏側矯正だと、歯の裏側に口の中の状態やスペースなどにより、裏側に装置をつけることが難しかったり、表側から装置をつけないと歯を動かすことができない場合があります。表側矯正のほうが多くの症例に対応できます。
③発音がしづらくなる
歯の裏側に装置を付けることで、これまでの口腔内のスペースも狭く感じるようになり、特に装置装着直後は、発音がしづらい、うまく話せない、ということがあります。
ただ、これは徐々に慣れていくものでもあり、早い方で数日、遅い方でも1ヶ月程度で慣れていくようです。
目立たない歯列矯正②マウスピース矯正
目立たない歯列矯正の二つ目として、インビザラインなどの「マウスピース矯正」が挙げられます。
マウスピース矯正とは、透明なマウスピースを用いて歯列の乱れを整えていく治療法です。
「インビザライン」というアメリカの会社の矯正が有名ですが、他にも数社あります。
患者さんの歯形にフィットするようにコンピューターでオーダーメイドのマウスピースを作成、2週間から1ヵ月ごとに交換して段階的に歯を動かしていきます。
マウスピース矯正の3つのメリット
①目立たない
透明なマウスピースで作られているため、装着しても見た目が変わらず、ほとんどわかりません。
②取り外しできる
一度装着したら治療期間が終わるまで取れないブラケット装置とは違い、マウスピースは付け外しが可能です。ブラケット矯正中の食事後の食べカス詰まりもなく、歯磨きを行うことができます。
③金属アレルギーの方でも治療できる
マウスピースはプラスチック素材のため、金属アレルギーをお持ちの方でも安心して治療することができます。
マウスピース矯正の3つのデメリット
①治療できる症例が限定される
マウスピース矯正は、対応症例が増えてはいるものの、基本的には軽微な歯並びの問題向けの治療となります。骨格(顎)にズレが生じている方や、抜歯を伴う大幅な歯並びの矯正を希望される方は不向きとなります。
②装着時間を守らないと治療効果が得られにくい
マウスピースは簡単に取り外しができる分、装着忘れが起こりやすくなります。マウスピース矯正は、基本的に食事と歯磨き以外は付けっぱなしとなるため、自己管理ができない方だと効果が出にくくなります。
③信頼できる矯正歯科医でないと思ったような効果がないことも
マウスピース矯正は、ブラケット矯正で長年経験を積んだ歯科医でなくてもできる治療のため、信頼できる矯正歯科を選ばないと希望通りの効果が得られないことがあります。口コミなどの情報を集めてクリニック選びをする必要があります。矯正歯科学会の認定医を選ぶようにしましょう。
まとめ
今回は目立たない歯列矯正として2種類の治療法とそれぞれのメリット・デメリットをご紹介しました。歯列矯正は時間も費用もかかるものですので、ライフスタイルと照らし合わせて、一番ご自身に合う方法で「きれいな歯並び」を目指していきましょう。