歯科クリニックには、「歯科衛生士」と「歯科助手」の仕事があります。双方ともに歯科診療に従事するスタッフとして歯科医の治療補助を行っていますが、その仕事内容にはどのような違いがあるのか、意外と知らない方も多いかもしれません。
そこで今回は、歯科衛生士と歯科助手の違いについてご紹介いたします。
これから歯科系の仕事に就いてみたいとお考えの方にとって、本記事が参考になれば幸いです。
■歯科衛生士と歯科助手の違い①資格の有無
歯科衛生士と歯科助手の違いの1つ目は、「資格が必要かどうか」です。
歯科衛生士として働くためには、国家資格である「歯科衛生士」に合格することが必要です。一方、歯科助手は特に資格は定められていないため、なくても仕事に就くことができます。
【歯科衛生士】
- 国家資格が必要。(歯科衛生士……歯科衛生士法第204号に基づく)
- 資格を得るためには高校卒業後、厚生労働省指定の大学・短大・専門学校に3年以上通って学ぶ必要がある。(93単位2570時間以上。そのうち、臨床実習20単位900時間)
- 資格取得まで最低3年以上かかる。
【歯科助手】
- 基本的に資格は不要。ただし、歯科助手資格認定制度などの民間資格あり。
- 設置数は少ないが、専門学校で「歯科助手コース」「歯科アシスタントコース」などで学ぶことができる。(1年間。必要な単位数などについては法的な定めなし)
- 高校卒業後、就職活動で「歯科助手」として応募可能。ただし、未経験者では応募できない歯科クリニックもあり。
■歯科衛生士と歯科助手の違い②仕事内容の違い
歯科衛生士と歯科助手の違いの2つ目は「仕事内容の違い」です。
歯科衛生士は患者さんの口腔内に触れて医療行為(歯科衛生士法第2条に基づく歯科医療業務)に携わることができる一方、歯科助手は行うことはできません。もし違反した場合は罰則が規定されています。(歯科衛生士法第13条・第16条の2)
これにより、歯科衛生士と歯科助手が対応できる仕事は区別されているといえます。
ここからは双方の具体的な仕事内容を見ていきましょう。
【歯科衛生士の主な仕事=医療行為】
- 歯科予防処置
歯科予防処置とは、虫歯(う蝕)や歯周病などの歯科疾患を予防するための処置です。 歯を強くし再石灰化を促進する「フッ素塗布」、歯石の除去を目的とした「スケーリング」、歯ブラシでは落ちない汚れや着色を専用の機械を使って落とす「PMTC」、歯の溝を特殊な材料で埋め、歯垢や細菌が入り込みにくくなり虫歯を防ぐ効果のある「シーラント」などがあります。
- 歯科診療補助
歯科診療補助は歯科医師の診療のための補助を行うことで、患者さんの治療に必要な器具を用意したり、診療中の歯科医師のサポートを行ったりします。さらに、歯科医師の指示によって一部の処置を行うこともあります。
- 歯科保健指導
歯科保健指導は、患者さんへ行う歯磨き指導のことです。正しい歯磨きをしていない人は歯垢が残りやすくなり、う蝕(虫歯)や歯周病の原因になります。そこで口腔内の健康を維持し歯科疾患を予防するために、患者さんに正しい歯磨を指導します。
患者さんそれぞれの歯並びや口腔内の状態に合わせるのはもちろんのこと、歯科治療中の状況に応じた指導を判断して行っていくことも大切な仕事のひとつです。
【歯科助手の主な仕事=非医療行為】
- 歯科治療補助
歯科治療補助とは、歯科医師が行う治療がスムーズに進むように治療の補助を行うものです。具体的には、患者さんにエプロンをかけてあげたり、歯科治療に必要な器具を用意したり、治療後の器具を洗浄滅菌したりといった仕事を行います。
- 受付・会計
受付・会計とは、来院された患者さんへの初期応対として行う仕事のことです。保険証や診察券の確認や治療内容の確認、診察後の会計まで一連の業務を行うほか、治療予約の管理、電話応対、待合室で待機する患者さんへの対応などもすべて行います。
- レセプト業務
レセプト業務とは、患者さんの治療で発生した治療代金のうち、自己負担分を除いた診療報酬をそれぞれの組合健康保険や協会けんぽなどに請求する仕事のことです。
健康保険加入者が歯科クリニックで受診すると医療費は3割負担となりますが、残りの7割を健康保険組合は負担することになっているため、歯科助手には正確かつスムーズな事務処理が求められます。
■歯科衛生士と歯科助手の違い③給料の違い
歯科衛生士と歯科助手の違いの3つ目は「給料の違い」です。
勤務先にもよりますが、歯科クリニックに正社員として勤務した場合の平均的な給料をご紹介したいと思います。
【歯科衛生士の場合】
歯科衛生士として勤務する場合の平均的な月収は「26万円前後」。
【歯科助手の場合】
歯科助手として勤務する場合の平均的な月収は「17万円前後」。
双方の給料差の理由は?
一番の理由としては、資格取得の有無と対応可能な仕事の範囲の差にあります。
歯科衛生士になるためには指定された学校で学ぶ必要があり、その上で国家試験に合格することが不可欠ですが、歯科助手には特にそうした資格取得は求められていないことにあります。
■歯科衛生士と歯科助手。向いているのはどんな人?
歯科衛生士と歯科助手は、どんな人が向いているのでしょうか?
双方ともに歯科医師や来院される患者さんとのやりとりは欠かせません。スムーズなコミュニケーションスキルは共通して求められる能力のひとつといえるだけに、「コミュニケーションが苦手」という人には難しい職業となります。
それに加えて、歯科衛生士の場合は医療行為で直接患者さんに触れる機会も多いだけに、集中力・手先の器用さなどが求められます。一方、歯科助手の場合は医療行為に携わることがないものの、レセプト業務や医療器具の管理などを遂行する上で責任感や正確性が求められます。
■歯科助手から歯科衛生士を目指すケースも多い
歯科系の仕事に就くために歯科助手として働いたのち、仕事にやりがいを感じて(もっとキャリアアップしたい……)と考えるケースも珍しくありません。
他の民間資格を取得したり、歯科衛生士にキャリアチェンジしたりといった道もあります。実際、歯科助手として働きつつ、資格取得可能な夜間学校に通うことで歯科衛生士の取得を目指すことも可能です。歯科助手として働いた現場の知識をそのまま活かしながら学べるので、ゼロベースで学ぶ人よりもアドバンテージがあります。
仕事に学業と二足のわらじにはなりますが、「長く歯科系の業界で働きたい」「キャリアを積んで給料も上げたい」という人にはおすすめです。
【歯科衛生士の資格取得を目指せる夜間学校の特徴】
- 授業が「17:30開始」「18:00開始」など、仕事が終わった後に学ぶことができる。
- 昼間の学校同様、夜間も3年間で学べる。
- 昼間に開校する学校よりも夜間の方がやや学費が安い傾向あり。
- 各種奨学金制度を活用して、金銭面の負担を抑えながらキャリアチェンジが可能。
■まとめ
今回は、歯科衛生士と歯科助手の違い(資格の有無、仕事内容、給料など)についてご紹介しました。
どちらも歯科クリニックでは患者さんの治療を安全かつスムーズに進めるためには欠かせない存在であり、非常にやりがいある仕事です。
歯科系の仕事に興味があり、これから本気で目指してみようと思うようでしたら、頑張ってほしいと思います。